noteのフォロワーを増やしたいので徳力さんに聞いてみた −後編−
こんにちは、フラッグ広報室のタカバシです。
note プロデューサーの徳力さんに「フォロワーを増やしたいんです」ということで相談に乗っていただきました。
前編では、note ユーザーとの積極的なコミュニケーション、そして note 特有の機能について知ることができました。
後編では「フォロワーを増やしたい」という僕の煩悩が晴れるのか? ぜひご覧ください。
タイトルからコミュニケーションがはじまっている
【タカバシ】ちょっと角度を変えて、タイトルの付け方について教えてください。一時期、キュレーションサイトだったり、そういうのが流行って、基本的に派手なワイドショー的な付け方にしたり、もしくはブログのノウハウとかで「7つの○○」とか数字を出せとかっていうのがあったじゃないですか。note でウケるタイトルの付け方みたいなものや傾向など、何か感じてらっしゃるものってありますか。
【徳力】
そうですね… タイトルも難しいですよね。note の場合って、エモい記事がバズってる印象が強いと思います。「エモい」って私もうまく表現できないで使ってますけど。どちらかというと、個人の想いが乗っている、感情を揺さぶられる系の記事がバズることって多いと思います。
2022年は『ゲームの勝敗でかんしゃくを起こす子どもにできることは大人げない大人になること』という記事がすごい話題になりましたけど、企業はこういう魂のこもった記事は普通書けないじゃないですか。なので、一回こういうエモさを忘れて話をします。
ネット全体のトレンドとして、一時期は検索エンジン対策でタイトルをつけるってのが流行り、その後、はてなブックマークなどで取り上げられて「7つの○○」みたいな記事が流行ったと思うんですね。ただ、最近その辺が落ち着いてきてるのは、SNSが普及してきたことによって、繋がり続けることが重要になってきたことが影響していると思うんですよ。
【タカバシ】ワンチャンスではなく、繋がり続けることが重要だと。
【徳力】
一昔前は、検索キーワードで1位になればいいとか、1回はてなブックマークとかでバズれば、その瞬間見られるっていう、瞬間的数字を追っかけてたんで、そっち側にみんなが寄っていったんですね。
今もやっぱり一部のネットメディアは、かなり過激なタイトルをつけて読者を呼び込むっていう手法をつづけてますけど、あれをやると何が起こるかというと、メディアの価値が失われていくんですよね。「このサイトは釣り記事を出すサイトだから」っていう。「またこのサイトか」って言われちゃうみたいな。
これは企業の note においては致命傷で、絶対やらない方がいいと思っています。我々は今、「等身大の企業広報」というイベントを定期的に開催していて、「等身大」という言葉を大切にしています。
【徳力】
自分たちの会社に合ったタイトルで、自分たちのファンになってくれた人たちが読んで、また読みたいなと思う、背伸びしない等身大の情報発信をした方がいいんじゃないかなというのが、個人的なイメージですね。
だから、タイトルは釣りすぎちゃ駄目だし、大げさにしちゃ駄目だし、大したノウハウも詰まってないのに何かありそうな感じにしたり、お作法に合わせて無理矢理「7つの方法」とかにするとかっていうのも、がっかりされたら終わりなので、よくないと思いますね。
【タカバシ】なるほど、頭の中にJAROを設置することにします。
【徳力】
一方で、Twitter などのSNSで記事が拡がることを考えると、従来の書籍の目次的なタイトルは駄目だと思います。「○○ 第一章」みたいな感じや日記のタイトルや日付とか。
どちらかというと、お喋りっぽいタイトルの方がちゃんと読んでもらえる気がします。特に記事が Twitter などでシェアされた時に、「情報」的なタイトルよりも、「コミュニケーション」ぽいタイトル、話しかけているように感じられる方が読まれているイメージがあります。
ここがプレスリリース的なものと note とかSNS的なものの大きな違いだと思っています。企業の担当者が情報発信をする時って、Webサイトの延長で作っちゃうんですね。そうするとコミュニケーションというよりは、チラシとかパンフレットっぽくなるんですよ。
でも、SNS、note って実はコミュニケーションなので、話しかけられてるような感じのタイトルにする方が、少なくともクリックをしてもらいやすいイメージがあります。
【タカバシ】話しかけられているような… というのは、例えばどういうことでしょうか?
【徳力】
僕の好きな事例でよく紹介しているんですけど、鮨ほり川さんの最初の投稿で『【73歳】現役で寿司屋をやっています【下北沢】』というものがあります。このタイトルを「自己紹介」にしてしまうと、印象が全然違いますよね。あとはプレスリリース的なタイトルだと「やっています」って書かないと思うんですよね。
【タカバシ】そうですね、「73歳の鮨職人が note を開始!」みたいになりそうですね。
【徳力】
企業としての発信となると、どうしてもプレスリリースっぽいタイトルになりがちなんですよね。鮨ほり川さんは記事の内容も熱くて、特にコロナ禍でお寿司屋さんが苦労しているという話もあって非常に話題になった事例ですが、自然体での記事だからこそ拡がったと感じています。
【タカバシ】もうすぐ 2000フォロワー(※インタビュー実施時点)ですね、すごいな〜。やっぱ読みたくなりますし、お寿司ですし。
【徳力】
ただ、普通に考えたら近所ではないお寿司屋さんの情報って、フォローしても意味ないじゃないですか。でも、この note をフォローしている人は73歳のお寿司屋さん個人をフォローしているのであって、お寿司屋の情報サイトをフォローしているわけではない。
そういう個人のキャラが出るかどうかっていうのがすごく大事だと思うんですよね。
【タカバシ】そうですね。でも、お寿司屋さんが46歳だったらあんまり伸びなさそうですよね。
【徳力】
そうですね。これはキャラがずるいよっていう話にはなっちゃうんですけど、その尖らせ方をどうするかみたいな話だと思います。
【タカバシ】どの芽を育てるかというか、見つけるかというか、それを意識することも重要ですね。
情報発信の「本当の目的」は?
【タカバシ】タイトル以外でも、何か参考になりそうな note ってありますか?
【徳力】
よく企業の成功事例として紹介させていただいているのが、NECネッツエスアイさんです。NECネッツエスアイさんも note のフォロワーは決して多くはないんですよ。
【タカバシ】本当だ、168フォロワー(※インタビュー実施時点)ですね。
【徳力】
話をお聞きした時にすごい面白いなと思ったのは、社員の方々の問題意識から note の発信をはじめられたという点です。
大企業では良くある話だとは思うんですが、当時、NECネッツエスアイさんと同業種の企業の採用パンフレットに書いてある文章がどこも同じような文章だったそうです。そこで、NECネッツエスアイの方々が「このままじゃダメだ」と、新しく「コーポレートカルチャーデザイン室」という新しい組織をつくり、自分たちらしい情報発信をしていこうと議論をされて、初めに出した記事がこれなんですよね。
【徳力】
『はじめまして。NECネッツエスアイです!』 って記事で、社長さんが出てきて、社長さんがまたこれなんか Ushitube っていう YouTube もされています。社長が率先してこういう等身大の情報発信をやる、というのを社内に向けて発信するっていう構造にもなってるんですよね。
最初に登場されるのは社長なんですけど、その後、それ以外のさまざまな部署の人たちの話が出てきている感じで、会社としてのキャラを出していく取り組みをされてるのがすごく印象的でした。
NECネッツエスアイさんの場合には、こういう活動を新しい部署を作って実現することによって、採用における企業の人気ランキングのようなもので急上昇したらしくて、「そういう情報発信って意外と採用に効くもんなんだ」って、私も初めて聞いたときはびっくりしました。
求職者からしても、人の顔が見えない大きな会社やブランドよりも、人の顔が見えてコミュニケーションできる会社の方が応募を考えるきっかけになる、みたいな話なのかなと思います。
【タカバシ】NEC関係の会社って堅いイメージで、こういうことやらなさそうと思っていましたけど、ここまでやるっていうのは何か刺激になるというか、参考になります。
【徳力】
ただ、先程お話ししたように、NECネッツエスアイさんも必ずしもフォロワー数は多くないんですよね。最初の話に戻りますけど、別に note のフォロワー数が多い必要はないという話の例だと思います。
NECネッツエスアイさんのような「採用広報」という採用向けの情報発信の場合は、求職者が気になった時に検索して見に来てくれればいいので、フォロワーを無理して増やす必要は低いんですよね。それよりは、求職者がほしい情報がちゃんとストックとして溜まっていく方が大事だと思います。
なので、企業が note を活用する場合は、目的によってフォロワー数は割り切っちゃうっていうやり方もあると思います。
僕が企業の情報発信で一番おすすめしているのは、NECネッツエスアイさんのようなやり方なんですよ。結局、求職者に読んでもらえばいいっていう話で言うと、検索した時にこういう記事が見つかればいいし、極端な話、面接の時に喋る会話を記事にしておけば、面接の時間が効率化できるんですよね。
10人に毎回毎回同じ話を10分かけてしてるんだったら、10人に面接の前にこの記事読んどいてね、ってメールで note の記事を送ったら、この10人分の10分間が短縮できるわけですよ。そうするとこの記事はそれだけで書いた意味があるはずですよね。
さらに、この記事を書いたことによって、面接を受ける前の段階の人も検索がきっかけで見に来たり、会社のサイトからそれを見に来たりするとなると、この記事の価値がさらに上がる可能性があるんですよね。
ここが note みたいなストックのコミュニケーションの本質だと思うので、個人的にはまずフォロワー数を気にせずに、自分の仕事を楽にしたり、自分のコミュニケーションを楽にするために記事を書く、というところから始めていただいた方がいいと思います。ただ、当然、担当者としてはフォロワー数が全く増えないより、徐々に増えていく方が楽しいのは分かりますけどね。
【タカバシ】そうか… やっぱり、僕の煩悩だったわけですね、「フォロワーは多い方がいい! 増やしたい!」っていう。
noteを本業で役立てる、そのために
【徳力】
企業として情報発信をするんだったら、別に note の記事を書くのが本来は本業じゃないじゃないですか。だから、本業でうまく役立てるためにどうするか、というところから入る方が正しいと思うんですよね。
note のフォロワー数を増やすっていうことよりも、やっぱりフラッグの魅力をいかに多くの人に知ってもらうか、例えば、採用広報に使うのであれば、面接をする人たちの効率化だったり、入社した人の定着率を上げたり。目的はいろいろあるはずで、それによって記事の書き方とか、情報発信の仕方とかも、本当は大きく変わるはずなんですよね。
採用広報以外でいうと、BtoBの営業でも同様のアプローチがいいと思っています。BtoB も今までは、業界での実績や知名度があるサービスを持って営業マンが営業に行くケースが多かった。ですが今は企業秘密ではないレベルのノウハウ等をオンライン上に出すことによって、その記事を読んだ人が「この会社いいじゃない」って思って、仕事のオファーが来ることもある。そうすれば、今までの営業プロセスをすっ飛ばせることになります。
note の記事を書くことが、ある意味営業活動の代わりになりうると考えれば、営業の人が10社回る間に1記事書いたら、案外それを長い目で見ると毎年1件ぐらいの受注増につながるということがありえるわけですよね。
そういう感じで、note の記事の比較対象を、ネットのバナーとか動画広告だけではなく、広い視点で考えるというのも僕は大事だと思います。
当然、企業で note を活用する方からすると、note 活用で成功したいし、その成功のための正解がわかるんだったら、正解のやり方を教えてもらってからやりたいっていう気持ちはめちゃくちゃよく分かります。
ただ、note だけでなく、SNSを活用した情報発信の多くの場合において、始める際の期待値が高すぎるっていうのが全ての失敗の元だと思っています。
特に、採用広報やBtoBの営業を目的とするのであれば、バズる記事を書く前提での広告効果とかを比較対象にするのではなくて、普段のお客さんとのコミュニケーションとか営業トークとか、そういうリアルな活動を比較対象にすると、なんとなく良い突破口が見えそうな気がしますね。
余談ですが、私も YouTubeチャンネル「徳力のミライカフェ」を開設して、1年間やってみて、やっと1000人突破しました。YouTube界隈で1000人ってかなり少ない人数なので、結構多くの人に「苦労してますね」「徳力さん、Twitter のフォロワーたくさんいるのに YouTube は1000人しかいかないんですね」みたいに言われるんですけど(笑)
自分の話を聞いてくれようとする人が数百人とか、1000人いるっていうのは、普通ならこうやって1人1人としか喋れないと考えたら、幸せだなって思うようにしています。
100万人とか数十万人フォロワーがいる人たちと自分を比較しないようにするということですね。そもそも私が喋る話はBtoB界隈の人向けの話で、そんなマス向けの人に登録者数で勝てるわけがないんです。
SNSでは、フォロワー数が可視化されているので、どうしても関係ない企業と同じ土俵で数字を並べられちゃうんだけども、自分は違うところにいるっていうふうに思えるかどうか、これがポイントという気がします。
徳力さん、ありがとうございました!
それにしても可視化された数字、比較できてしまう数字というのは恐ろしいですね。
note の運用担当として、なんのための情報発信なのか、目的をしっかりと整理して、フォロワー数という煩悩に惑わされないようにしつつ、今、そしてこれから繋がる皆さんとのコミュニケーションを良いものにしていこうと思いました。
記事を読んでくださった皆さま、改めまして…
今後ともよろしくお願いいたします!